三百有余年を経過した千代川町北ノ庄・嶺松寺の改築のため、四月二十八日から前庭の植木、燈籠とともに三鶴天亀の手水鉢が移動されました。
この鉢が自然石に掘られた物か置き物か、割れ目もあり動かせるか心配されましたが、高さ九十センチ、幅百八十五センチ、奥行六十〜百四十センチの不定形の置き石で無事に移動されました。
彫刻は庭木の中でもありイワヒバやマメヅタ等、苫に覆われていたため、昭和五十二年七月まで彫り物が分からなかったのですが、今回の移動によりさらに鶴の足三分の一が土の中にかくれていたり、一羽の鶴は片足を上げていることが分かりました。
普通「鶴亀」の画や置き物の亀は下にあり、鶴は上にありますが、百二十センチの大きな亀が鉢の上部に、前の側面に三羽の鶴がいずれも西方浄土に向かって頭を下げ、悲しそうに歩んでいる様です。亀の右後方に三十×四十センチの長方形で、十二センチの深さの水鉢が掘られています。
「三羽の鶴は、仏教でいう三界(過去、現在、未来)を表わし、西方浄土へ還る時、この鉢水で心身を清める」という、万年長寿の亀を天にいただく江戸時代の彫物といわれています。
寺院にふさわしい見解から手水鉢というより、長寿鉢と言いたい鉢が世に出た様です。新築されたら、どこに置かれるか?この鉢水で身を清め、健康で長寿の人生を送れる様に阿弥陀様にお願いしたいものです。
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